書道筆、画筆、そして女性の方は化粧筆と 私たちの生活に不可欠な毛筆ですが
わが国の筆の8割を生産するという筆の一大産地 広島県安芸郡熊野町を訪ねました。
 
 熊野町は広島市の東郊 東広島市や呉市とも接しています。
四方を山々に囲まれた熊野盆地を中心に町が広がり、現在人口が26,000人。広島市と呉市のベッドタウンとして 人口も増え続けています。
 筆の産地である熊野の町場は標高200mに位置し 
千年以上も前から大分の宇佐八幡宮から勧請された古社もあるなど 歴史遺跡も息づいた 魅力ある場所でした。

 なかなか誇り高い町のようで 平成の大合併でも ここは周辺の町と合併することなく 単独町制を貫き通しています。
住民にアンケートを取った結果では 新興住宅地だけに広島市との合併を望む声も比較的多かったようですが
古くから住む住民にとっては 筆の里である“熊野町”の町名が消えるのは抵抗があるのでしょうね。
  筆の里工房

 まずは 熊野最大の観光スポットである“筆の里工房”に行って
みました。
県道沿いに案内看板が出ているので すぐ分かります。
この施設は1994年(平成6年)に、伝統を誇る「熊野筆」という地域
の特性を活かし、魅力ある熊野の町作りを図る目的で誕生したも
のだそうです。
 “日本一の筆ミュージアム”に恥じない 観光・文化の一大拠点施設となっており 
筆の専門ショップ、イタリアンレストラン、ミュージアムショップ 
ギャラリーホール 筆司の家・彩筆庵 図書資料室などがあります。
世界一の大筆は圧巻 筆の歴史、原材料と製法、用途と選び方、手入れと維持の方法
など詳しく説明され 見ごたえがある内容です。
 熊野全体で作られる筆は 年間に1,500万本。
一人の職人が1日に50〜100本を作ります。
穂首(毛の部分) 軸の加工 仕上げ 銘彫刻など 行程ごとに分
業化され 多くの人が関わって製作されています。
 筆の価格は 原材料と筆司の技術により様々です。 筆の原料
となる動物の毛は、主に、ヤギ、馬、鹿、タヌキ、いたちなど
それぞれの毛の特長を活かし 様々な性質の毛を混ぜる度合いに
長年の経験と高い技術を持った勘が必要です
 筆司の家…熊野の筆作りの家が再現され 名人の技を間近に見ることが出来ます。
      
1500種の筆を販売する筆の専門店 
kumanofude.com shop
熊野筆は欧米では高級品として定評
があり ひっぱりだことか....。
 熊野筆は大別すると 書道用筆、画筆、化粧筆、誕生筆の四つに分かれます。
原料の毛は中国や北米から輸入、軸は国内各地の竹と中国や台湾からの物が使われています。
 熊野筆を製造する職人(“筆司”と呼ばれ毛の部分を作る)は1500人余、
経済産業大臣が認可した伝統工芸士(40〜50年筆作り一筋に取り組む人)は15人で
全国の書道家の特注品の制作などを行ない そういう筆は20〜50万円クラスです。
イタリアンレストラン ミュージアムショップ  展示室は主に地階にあります

 筆の里工房はバラエティに富んだ企画展を開催しています 
入場料は常設展のみですと300円ですが 今回企画展が行なわれていたので500円でした。
 他に夏休みはイベントとして 化粧筆使用してのメイクアップ講座、スケッチ教室、親子で歩く筆の里
弦楽四重奏団コンサートの他 絵てがみ体験、手描き友禅体験 筆づくり体験等も行なわれるようです。

 筆の歴史をはじめ筆から生まれる書、画、化粧、工芸、遊びなど、
筆の広がりの世界を見て、触れて、体験することができる施設でした。
     筆の里工房 広島県安芸郡熊野町3115-1 http://www.fude.or.jp/
              9:30〜17:00(入館は16:30まで)  休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)
  
◆◆ 建物を出て 時間をかけて“筆の里熊野”を散策しました。
坂面大池 (さかづらおおいけ) 
 筆の里工房から見えるのがこちらの池です
高台にあるこの池の遊歩道 歩くには気持ちよく 
熊野の町も一望できました。
水辺のギャラリー 
毎年9月 筆まつりで開催される大作席書の作品の縮刷版が
石碑にされて 坂面大池の周辺に並んでいました。
  榊山神社
 榊山神社は承平3年(933) 宇佐八幡宮より勧請された古社と伝えられています。
宇佐神宮級の大きな神殿が (地味と言っては悪いのですが^^;)熊野の田舎町に
あるのですから凄いですよね。

 神殿は近代寺社建築の初期例として貴重な存在で
装飾も秀麗で町の重要文化財になっています。
筆の商売が広く行なわれ 国内諸藩との交易が盛んだったのか 
神社の周囲や石段の寄贈碑をじっくり見て歩くと 
大坂、奈良や尾道などの豪商の名も見られました。
筆塚(←写真左)
 筆の精と祖先の威徳に対し感謝を込めて 建立されています。
同じ筆の里である 旧川尻町(現呉市)にも 同じような筆塚があります。
(書は 広島県竹原市出身の池田勇人元内閣総理大臣です)
筆まつりの時は 筆塚で
「筆供養」が行なわれます。
     筆供養の場(写真右→)
  熊野本宮社
 熊野本宮社は 養和元年(1181)紀州の
熊野大宮社より勧請されたと伝えられます。
三重県に熊野市がありますが ここ熊野
はそちらと関係があった訳ですね。
熊野は江戸時代は豊かな穀倉地帯だった
ようで宮島へ多くの米を奉納していました。
それ故、宮島の管絃祭では 見物に来た
熊野の衆は 当日の宿泊を特別に
取り計らってもらっていたそう。
  熊野町郷土館
 ここは熊野町の筆通り(中溝通り)と呼ばれる 昔ながらの
町の中心に位置しています。
大正時代は造り酒屋だった建物で 筆問屋の店先を再現して
筆の展示や熊野町の民俗資料が数多く展示されていました。
入場が無料というのも嬉しいですね。

玄関にかかる看板は 山本空外の書
 熊野町に筆作り事業所は100以上あります。
筆の工場見学が可能なのは下記の10社(2007/7現在)で
史芳堂筆舗 丹精堂 平尾文明堂 広島筆産業 竹宝堂
長栄堂 彷古堂 瑞穂 一休園 久保田号
平日を中心に10時〜15時であれば見学可能なようです。
郷土館では 筆工場見学マップも用意されていました。 

 毎年9月23日(祝)には“筆まつり”も開催され 約20畳の布に
書家が大筆で文字を一気に書き上げる「大作席書」や 露天に
市が並び「筆の市」毛筆 画筆 化粧筆が半額近くで買えます。
(筆の市は 榊山神社下の筆塚から宮の前通りに並びます)
 熊野町の人口の2〜3倍の 6万人の観光客で賑わうそうです。
この日は学校のグラウンドが駐車場になり バスでピストン
輸送するとの事です。
筆まつり http://www.kyosai.or.jp/~kumano/
 熊野の筆は 江戸末期に始まり170年の歴史があります。
幕末期となると幕藩体制がゆらぎはじめ 
貧しい農民が農閑期に近畿方面に出稼ぎに行き易くなり
奈良で筆や墨を仕入れ行商すると共に 摂津で筆作りを学んだ
若者が村人に筆作りを教えて販売するようになり
浅野藩もこれを奨励した事で発展しました。
 明治になると学校制度が始まり 書写・習字教育が行なわれ
筆作りは飛躍的に発展しました。
筆問屋の様子です 筆造りの道具展示がここにも

 大正、昭和になると他の生産地は筆作り以外の産業が発展し
ますが 盆地で鉄道もない熊野は 近代工業が進出する事なく
ずっと筆作りが続きました。
画筆や化粧筆の生産は戦後になってからの事です。

 会社組織に発展したのは昭和30年代以降の事で
それ以前は家内工業的形態であったようです。
 筆問屋の百タンス 郷土館の方が詳しく説明して下さいました
 熊野の町場には毛を作る所、軸を作る所など、近代化以前は
それぞれ分業で担っていた工房が存在していたのですが
会社組織になるとどうしても 自分の所の技術は自社で囲って
しまうので 技術の共有がなされず、若い後継者も少ないのが
悩みだそうです。(筆の穂首を全部一人で作れるまで最低10年
の経験が必要)

熊野筆の殆どは手作りで 軸の一部以外機械化は困難です。
最近は安価な中国製の台頭に 頭を抱えているようですが
熊野筆は 格段の品質の良さを誇ります。

 熊野は全国生産の80%以上を占める筆の生産地ですが、
筆の卸・小売り店舗はそう多くありません。
販売形態が 東京大阪京都など大都市圏の文具商 画商
筆問屋、書道用品店 百貨店などを周る出張ルートセールス
であり 熊野筆商人は 1週間〜10日位で販路を巡回します。 
        熊野町出身の童謡作曲家 坊田かずまの展示も

 町を散策すると 書の歌碑が所々に点在しています。
筆の町らしい風景ですね。

 それにしても広島市東郊というのは 熊野の筆 天応(呉)の万年筆、
仁方(呉)のヤスリ(最近は衰退)など 伝統工業が目立つ所ですね。
銘菓としては Kuma焼(筆の里工房で販売)、ふで娘、筆もなか 
地酒は大號令 筆匠 筆華があります。
   熊野町ホームページ 
   日本の伝統的工芸品>>熊野筆
  
 熊野は山陽自動車道や国道2号 鉄道路線から離れ 不便な位置にありますが、
日本一の筆の産地が 意外な所に存在する事実が興味深く思えましたし
熊野町郷土館の方に 非常に詳しいお話を聞かせて頂き 
充実したメモを取りながら 最高の取材活動ができました。
今後の「ぶらり探訪」でまた、ユニークな“日本一の○○産業の町”を探し 
お届けできればと思っています。


一本一本手作りの熊野筆は質が良く 
妻も、肌に乗せた時気持ち良くて 使い心地が最高と指摘しています。

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